副社長は今日も庇護欲全開です
「副社長、今夜は本当にありがとうございました。とても美味しかったです」

ホテルを出て、副社長の車に乗りながら、もう一度お礼を伝える。

食事そのものも素敵だったけれど、副社長と過ごせたことが貴重な思い出になった。

「気に入ってもらえてよかった。こちらこそ、付き合ってくれてありがとう。それじゃあ、帰ろうか」

エンジンをかけた副社長に、私はすぐに声をかける。

「副社長、駅までで大丈夫です」

「駅? なにか用事があるのか?」

「いえ……。ただ、自宅まで送っていただくのは、さすがに申し訳ないです」

食事のときの会話から、副社長がオフィス街からほど近い、タワーマンションに住んでいることが分かった。

それなら、私の住んでいる場所とはまるで正反対。とても、自宅まで送ってもらうわけにはいかないと思っていた。

だけど、副社長は私に小さく微笑むと、車を走らせ始めた。

「気にしなくて大丈夫だ。明日は、俺も仕事が休みでね。余裕があるから、気を遣わなくていい」

「本当ですか……? それなら、よろしくお願いします……」

副社長にそう言われたら、好意を無下に断るのも失礼だろうし、今夜だけ甘えよう。

だいたい、こうやって一緒に帰るのも、最初で最後だろうから……。
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