副社長は今日も庇護欲全開です
しばらくの間が空いて、副社長の返答がないことに不安が広がる。

もしかして、引かれちゃった……? 余計なことを言うべきではなかったかもと、後悔し始めたとき副社長の静かな声がした。

《今日、少しでも会えないか?》

「えっ……?」

一瞬、なにを言われているか分からない。それだけ、とても驚いてしまった。

《きみの都合さえよければ、少しだけでも。そんなに遅くまで振り回さないから》

電話口から心地よく聞こえる副社長の声に、胸の高鳴りは増していく。

会いたいと言ってくれる気持ちが嬉しくて、自然と笑みが浮かんできた。

「はい。私も、お会いしたいです……。どこで待ち合わせしますか?」

《迎えにいくよ。一時間半ほどで着くけど、大丈夫かな?》

「大丈夫です。でも、いいんですか? ここまで
、迎えにきてくださるなんて」

昨夜も、送ってもらったばかりなのに……。副社長の優しさに、甘えてばかりでいいのかな……。

心苦しい思いで聞いた私に、彼の穏やかな声がした。

《俺がそうしたいから。きみは、気にしなくていい》
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