副社長は今日も庇護欲全開です
「お疲れ様」

だけど、直哉さんは私を一瞥しただけで、愛想のない挨拶を返してくれるだけ。

二人きりのときとのギャップに戸惑いつつも、これは彼の社内でのいつもの姿だと言い聞かせる。

見慣れているはずなのに、こういうクールな姿は今はどこか寂しいような……。

でも、凛とした雰囲気は、やっぱり見惚れてしまいそうになる。

「お疲れ様です、下村さん」

住川さんが控えめに口角を上げて、挨拶を返してくれた。

そういえば、住川さんは直哉さんとの関係を知っているのかな……?

信頼している秘書の人とはいえ、プライベートまでは話さないか……。

住川さんが以前、私と副社長の絆が深まっていると、そう言っていたことを思い出して悶々とする。

あのときたしか、“希望的観測”とも言われたんだっけ? 意味がよく分からなかったけれど、けっして悪い印象ではなかった。

だからといって、直哉さんとの交際を反対されない、というわけではないだろうけど。

住川さんは、知っているのかな……。

「下村さん、私の顔になにかついていますか?」

エレベーターの中で、住川さんがクスクス笑いながら聞いてきた。

「い、いえ。すみません。なんでも、ないです……」

視線が気づかれたみたいで、バツの悪い思いがする。顔をそらし、三人しか乗っていないこの空間が、とにかく気まずい。

落ち着かない気持ちのまま、エレベーターがフロアに着くと、直哉さんたちに会釈をして急いで降りた。
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