副社長は今日も庇護欲全開です
「はぁ……。ドキドキした」

「なにが、ドキドキした?」

エレベーターを降りてため息をついたところで、直哉さんの声がして驚いて振り向いた。

「な、直……。副社長、どうして⁉︎」

社内で“直哉さん”は、ご法度。誰に聞かれるかも分からないから。

それなのに直哉さんは、こうやって気軽に私に声をかけていいの……?

目を丸くする私の腕を掴んだ直哉さんは、廊下奥の会議室へ連れて入った。

「直哉さん……。ちょっと、大胆過ぎませんか? 誰かに見られたら……」

二人きりの会議室……。直哉さんが鍵を閉めたから、余計にドキドキする。

自然の光だけが差し込む室内は、少し薄暗い。そんな雰囲気が、より“密会”のように感じられて緊張が増していった。

「大丈夫。誰もいなかったから。それに、五分以内には、解放するよ」

そう言った直哉さんは、私の顎を軽く引き上げる。少し意地悪そうな表情で、私を見つめていた。

「住川くんのことが、気になっていたみたいだな。俺がいるのに、どうして彼を見ていた?」

「あ、あれは……」

もしかして、直哉さんはヤキモチを妬いてくれている……?

それは自惚れかもしれないと思いつつも、ときめく気持ちを抑えられなかった。

「あれは? なに?」

「住川さんは、私たちの関係を知っているのかなって、そう思っていたんです」
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