泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
「空我、夜ご飯出来たわよ」
母さんが部屋のドアをノックして、声をかけてくる。
「……ん、行く」
俺は慌てて吸っていた煙草を灰皿に擦り付けて、火を消した。
着ている服が煙草くさかった。俺は上の服を取り換えてから、着ていた服を持って洗面所にいった。
洗面器のそばにあった洗濯機に着ていた服と洗うのに使う粉を入れて、洗濯をした。
「空我?洗濯してるの?」
母さんが洗面所のドアをノックして、声をかけてくる。
俺は洗面所のドアを開けた。
「……うん。潤達と遊んでた時に、少し汚しちゃったから」
「……空我、煙草吸った? 服を取り換えたら、匂いが消えると思ったの?」
母さんは煙草の匂いが嫌いなのか、鼻を軽くおさえて、首を傾げて聞いてきた。
ヤバい。
バレた。怒られる!
「ご、ごめんなさい」
俺は顔を伏せて、母さんから目を背けた。
「謝らないで。怒ってないから」
「えっ?」
「何か嫌なことでもあったの?」
「……別にない」
自分を大切にできない原因を作った母さんに話そうとは思えない。
「……そっか」
母さんは目尻を下げて、悲しそうな顔をして言った。
「被害者づらすんなよ!!」
――しまった。
俺は慌てて口を抑えた。
思ったことをそのまま口に出してしまった。こんなことしちゃいけないのに。
「く、空我」
「……ごめん」
俺は洗面所を出ると、部屋に戻って、スマフォと財布をズボンのポケットに突っ込んで、黒のパーカーを羽織った。
ドアを開けて部屋を出ようとすると、廊下に母さんがいた。
「空我、ご飯いらない? 潤くんの家いくの?」
母さんの目が、ほんのり赤くなっていた。
「……うん、潤の家いく。飯は明日の朝にでも食べるから、残しといて」
「そう。わかったわ!」
母さんは俺が食べると言ったのが嬉しかったのか、笑って返事をした。
「……ん。じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
俺は玄関に行って靴を履いて、家の庭にとめてあったバイクで潤の家に行った。