くまさんとうさぎさんの秘密

若い支配人

by 熊谷 ひとみ
目が覚めて、困った。
私は、篤にガッチリと抱き締められていた。

篤は、若い。明け方まで離しても赦してももらえず、焦らされては責め立てられた。

腕から抜けようとすると、ぎゅっと抱き締められた。
「ひとみ?ひとみさん?」
胸の頂きをつままれて、体がひくんと揺れた。
「勝手に逃げるのなしだよ。」
昨日より、体が反応しやすくなってしまっている。
「逃げたら、捕まえて監禁しちゃうからね。」
「本気で言ってるよね。」
「そうだね。」
「正気じゃないよ。忘れてほしい。」
「無理だよ。」
「すぐにあきるよ。」
「たち悪っ。本気で怒らせたいわけ?俺がどんだけ悩んでやっちゃおうって決めたと思ってんの?勢いじゃないから。」
篤は、もう一度私の体を探った。
「ひとみさん、大人でしょ。はずみですとか過ちですとか、許されないでしょ。。」

後ろから、耳を噛まれた。真珠をひっかかれて、腰が引けたところで、彼が、もうワンラウンドやっちゃう気なんだと気がついた。。何か言おうとしたら、また真珠を刺激されて、動けなくなったところに入れられた。刺激されて、でも、やっぱりいきそうになる前に、手が止まった。
「篤さ、私が初めてじゃないよね。」腰をよじりながら、私は言った。
「昨日から、妬いてくれてる?」
「怖い。何か、はめられてそうで。騙されそうで。。」
「俺が本気なの知ってるでしょ。熟女籠絡すんのに、こっちも必死。」
篤が、中で、動いた。
「たぶらかされてんの、世間的には俺の方なんじゃないの??」
「やめてよ。。」
「妙な罪悪感持てないくらい支配してやるよ。半年もしたら素直な女に作り替えてやるから。」
覚悟しとけと、篤は言った。今どきの若い子は怖い。怖すぎる。

篤の考えることは、時々分からない。けれど、篤のお母さんの考えることなら分かる気がする。
私みたいな女に入れ込んでるとあっちゃ、どう思うだろう。
篤は、年齢は下でも、上にいてもらうのが有難いだけのものがある。前のオーナーに大切に育てられてる。
人を使うのがうまい。
お願い上手で、でも、、なめられない。
面んと向かっては怖い言い方するけれど、見えないところで優しいから、大切にされてることは分かってる。
カゲホメがうまくて、女男問わず良い緊張感が生まれる。

実際、篤の代になってから、料理は美味しくなってる。季節ごとに分かりやすいテーマがあって、
常連さんを飽きさせない。厨房とお客さんの間の風通しが良い。
衛生管理やセキュリティのシステムも、合理化された。
彼は掃除する人にも、厨房の人にも、可愛がられていた。

お手洗いの洗面台をリフォームする際にも、掃除の担当をする複数名と篤が楽しそうに話していたのを覚えている。良いものには、正しい手入れが必要とか必要じゃないとか。
リフォームされたお手洗いに、鱗や汚れの飛び散りを見かけたことがない。
篤は、よく、担当メンバーのセンスを褒めてた。
リフォーム前まで、汚れ発見とあらば、すぐに誰かが呼び出されていたが、誰かが呼ばれることは減った。自分から動けるメンバーが増えた。
皆に、一流の店で働いている自覚が生まれていた。
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