くまさんとうさぎさんの秘密

ウサギの兄弟

by宇佐美 優那

保育園でバイトを始めたことを、優矢にだけは話した。
優矢の話では、昨日澤谷さんは、シューアイス持ってやってきただけで、優矢は会ってないらしい。奥の部屋で遊んでるように言われたのだそうだ。
淳子とお父さんとお母さんで対応したそうだ。
澤谷さんは、私と喧嘩してしまったと話していたそうだ。何分、優矢が聞かされたことだから、現実は、もっと派手に何か言いつけられているかもしれない。。
昨日は、うちのお母さんから、何回も何回も着信があったし、知らない番号だと思ったら、澤谷さんのお母さんで、びっくりした。
「私が悪いんです。お付き合いは続けられません」というのを繰り返した私に、澤谷さんのお母さんは、
「強情なお嬢さんね。。」と、ため息をついた。
その後は、もう同じ番号には対応しなかった。

優矢は、バイト先の保育園に呼び出した。優矢にピカリンをやったら、1番好きなキャラクターではなかったけど、喜んでくれた。
保育園の先生が言った。
「優矢君が、いつも「ユウナ」の話をしてたんだけど、今日ちょっと分かったわ。謎が解けた。」
「私、中学で家を出て、あまり保育園時代の優矢を知らないんですよ。」と、私は言った。
「優矢君、3才からだったでしょ。すごくしっかりしてて、誰が育てたんだろうって、ちょっと評判だったのよ。その、箸の上げ下ろしがすごく綺麗で、持ち物も綺麗にかたずけてた。」
「嬉しいです。」
「そうそう、優矢君の、その頃の口癖が、「ユウナが言ってた」だったわ。何か、タオルの絞りかたにしても、靴の揃えかたにしても、誉めてあげるとね、「~するんだよって、ユウナが言ってた。」って、いつも答える。時々顔を出すお姉ちゃんは淳子ちゃんだし、ユウナさんは、ベビーシッターか何かかなあって職員室で話してたのよ。」
私が、家を追われたと感じた頃だ。
優矢が、唯一私が帰れる場所だ。
優矢が1番かわいかった頃のことを、よく覚えてる。
お座りできるようになったばかりの優矢を、布団の上に転がして遊んだ。可愛くて可愛くてしょうがなかった。
「お母さん、仕事頑張ってる?」と、私は、優矢にきいた。
「お仕事頑張ってるって。今度、教科書書くんだって澤谷さんと約束したらしい。」
私は、もう家には帰れない。くらくらとした。
「優那、今どこにいんの?」
優矢は心細そうに尋ねた。
「どこって、引っ越してないよ。」
「でもさ、優矢、淳子と優那の家に行ったの。昨日。会えなかった。」
「宿題一緒にやってた友達の家に泊まったんだよ。ごめんね。電話くれたら良かったのに。。今日は、バイト終わったら電話するって、お母さんに伝えて。」
「分かった。優那、お仕事頑張って。」
「楽しいから、頑張るよ。また、ここで会おうね。」と、私は言った。
さて、、明日までに、クラスの飾りつけを梅雨仕様に入れ換えなければならないし、園児のみんなが手作り体験する梅ジュース、紫蘇ジュースの材料を計って分けておかなければならない。










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