くまさんとうさぎさんの秘密

母ウサギについて

by宇佐美 優那
久しぶりに、お母さんと電話がつながった。
「お母さん、澤谷さんと、喧嘩しちゃった。」
「何でまた、。」
「私ね、こないだ落選した時、小説は載ることになったけど、澤谷さんとしか話してないの。他の人は、佳作とがでも、審査員の誰かから評をもらってるし、それを直接聞きに行くこともできたみたいなのね。でもさ、澤谷さん、別に審査に関わってたわけでもないし、載せてくれた人にも、一回も挨拶してない。それだけじゃなくて、澤谷さん、私が向上心ないくせに、経費で贅沢させてもらえないとちゃんと書かないみたいな話でっち上げて、いろいろおごってくれてたわけ。。」
「何訳の分からないこと。、!」
「私の名前を汚しておごってくれたものだって、途中で気がついちゃった。」
「あんた、澤谷さんが、あんたのためにどれだけのことをしてくれたか分かってるの???」
「何してくれちゃったか、すごく分かってるつもりだよ。あの連載だって、載って良いもんかどうかも分かんない。私は、それを聞くチャンスももらえなかった。。ヤル気ないやつにでっち上げられちゃったんだよ。。」
「喜んでたじゃない」
「バカだったんだよ。無理なもんは無理よ。」
お母さんには、通じない。
お母さんは、私立大学の教授で、心理学の教科書から執筆を始めた。彼女には、フランス料理が振る舞われる理由があるし、彼女には、取材のために旅行する理由もある。彼女は、私が何を卑屈になっているのかとしか思わない。彼女は、ゴージャスな女で、ゴージャスだから、エッセイも売れる。
私は、お母さんに私の思ってることを伝えるのは、諦めなければならなかった。。
「それに、私ね、澤谷さんに暴力ふるわれたの。警備員さんが澤谷さん取り押さえて、大変なことになったんだから。。ちょうどお店の警備員さんが、同級生の知り合いで、同級生もそこにいたから、その子んちに泊めてもらった。」
「お母さん、あんたは澤谷さんところにお嫁に行ったと思ってたのよ。その子の親御さんは、何て言ってるの?」
「テスト勉強一緒にするとしか話してないよ。でも、ちゃんと話してしばらく置いてもらおうかと思ってる。」
「そういう訳にはいかないでしょ。。」
「とりあえず、澤谷さんが落ち着いて話せるようになるまで、友達のとこにいるよ。1週間くらいたったら、考える。」
私は、一方的に電話を切ったが、、その後、お母さんからかかってくる訳でもなかった。
澤谷さんは、お母さんとは良いコンビだ。
出版されるもののうち、半分は教科書だから、教えてる大学などで、必ず一定数売れるのだそうだ。
ただ、お母さんの教科書は、一般受けする。
そこから、エッセイに転じて、爆発的に売れた。
お母さんは、むしろ、澤谷さんに面白いお金の使い方を伝授する方にある。芸術家は、それでいいんだろうけど、、
私も、お母さんと同じものを目指していると思われたに違いない。。


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