転生令嬢の異世界ほっこり温泉物語
「今日は何をする予定ですか?」

私はまだ眠い目を擦りながら上半身を起こして、昨夜の内に決めておいた予定を口にした。

「今日は村の南側を散策してみるわ。村の人達は何も無いって言っていたけれど、一応見てみたいと思って」

「では動きやすい服がいいですね。あと帽子も必要ですね」

ラナはテキパキと外出用の服を用意してくれる。その間に私は机の上に用意されている水桶の水を手で掬って顔を洗った。

ミント村の生活水と飲料水は、どちらも井戸から汲んで来ている。
ヒンヤリとして濁りのない良い水だ。そのせいか領主館の食事はとても美味しい。

この領主館で暮らすのは、私とラナを入れて九人。

クレッグ子爵家の代行で領地を取り仕切っている家令コンラードと、美味しい食事を提供してくれる料理長。馬車を動かしてくれる御者は庭師を兼任している。

それから、屋敷全般の雑事を受け持つメイドがふたりと、護衛役がふたり。

貴族の屋敷にしてはかなり少ない人員構成だ。
でも、彼らは優秀で小さな館は何の問題もなく回っていた。



ラナが用意してくれたのは、くるぶし丈のワンピースだった。裾に少しスリットが入っているから歩きやすい。

着替えが終わると、食堂に行く。
テーブルの上にはホカホカと湯気を立てる料理が並んでいた。

「美味しそう、いただきます」

鮮やかな黄色のオムレツに、新鮮な葉野菜、焼きたてのパン。

満足して朝食を終えた私は、ラナからボレロを帽子を受け取ると玄関に向かった。
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