君がいて、僕がいる。



「__静かだな」


お祭り騒ぎが遠くに聞こえる。
こんなにも近いはずなのに、ここは本当に静かで、心地いい。

この空気がやけに落ち着く。


体を休めよう、心を休めよう
そう向かったベンチに到着、したのはいいんだけど


「……お財布?」


なぜか、ベンチに男物のお財布がひとつ。
誰かの忘れ物かな…?

もしかしたら取りに戻ってくるかもしれないし、と私はそのお財布を触ることもやめて、隣へと座った。


ここからの帰り道もわからないし、きっと圭介も心配くらいはしてくれると思うけど…
なんかもうどうでもいいなって、そんな感じ。

あの日…圭介と出会ったあの日の気分に少し、似ていた。


「あ、あれ?真希ちゃん…だっけ?」

「え?」


ここに座って数分、なぜか私の名前を呼ぶ声がする。
暗くて最初はわからなかったけど

「あー…」

さっき、私に自己紹介してくれた3人組の1人だ。


「あ、俺北山。名前、さすがに一度じゃ覚えられないよね」

「い、いやそんなことは…ちゃんと覚えてましたよ」

「え、ほんと?なら嬉しいよ」


なんせ、超がつくほどのイケメン。
あとの二人はまぁ…普通だったけど、この人はピカ一だった。
なんだろう、正統派イケメン。こういう人、最近あんまり見ないよな。雰囲気イケメンなら多いんだけど…


「それより、どうしたんですか?」

「あ、そうだった!俺財布なくしたんだけど見てない!?
今来た道引き返してきたんだけど見つからなくて…」


・・・お財布。
めちゃくちゃ心当たりがありますよ。


「……これ、ですか?」

「あ!それ!!
やっぱここにあったのかー。めっちゃ助かったよー
免許証とかキャッシュカードとかいろいろ入ってるからまじで焦った」

「私も、お財布見つけてそのままにしておくのはすごく気か引けたので、落とし主が現れてよかったです。
私じゃ、交番に届けるにも場所がわかりませんから…」


本当、このままここに置いておいていいのか悩んだ。
他のものならまだしも、お財布なんて貴重品を、どうすればいいのかわからなかったから…


「そういえば、圭介と美咲は?」

「あー…たぶんお祭り楽しんでると思いますよ」

「…真希ちゃんはいかないの?」

「なんか私慣れなくて。
あの二人がすごく楽しそうなんで、私はそこに入れないからどうしたらいいかわからなくて、ついていくのがちょっと憂鬱になっちゃったんですよね」


情けない、よね…こんなの、ただの嫉妬だもん。
自分からはなにもできないくせに、勝手にはぐれて…圭介が心配するともわかっていながら、ね……


「…そっか。あの二人、仲いいもんな」

「……北山さんも、あの二人とはずっと仲いいんですか?」

「あぁ、今日俺といたあと二人いるじゃん?
それと俺、圭介、美咲の5人しか同級生いないから」

「・・・えぇ!?」

「はは、少ないよなー。
幼稚園から中学までずっと一緒。だから仲良くて当然なわけよ。

……今圭介の彼女の真希ちゃんにこんなこというのもなんだけど、圭介が引っ越すまでは圭介と美咲、完全な両思いで小さい頃からずっと一緒だから、この組み合わせで祭りにいくのも定番だったんだよ」

「……そう、だったんですね。
じゃあ私がいたらただのお邪魔虫じゃないですか」


はは、と笑ってみたけど、本当に虚しくなる。
どうして私を呼んだんだって


「……でもさ、きっと圭介は
俺らと真希ちゃんを仲良くさせたかったんじゃないかな」

「え?」

「じゃなきゃ、わざわざこんなとこまでつれてきたりしないし、紹介もしないでしょ」


仲良く、か……
でも私、全然美咲さんとも他の人とも仲良くなれてないや…

「……でもなんか、美咲さんは今でも圭介のことが好きそうですね」

「え、そうかな?」

「なんとなく…私には真顔だし、会話もしようとしないから、彼女としてきてる私が嫌いそうです。」


そして、私も嫌だと感じるあのオーラ。
私のことを邪魔だと思っているか、そもそも眼中にないか…


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