君がいて、僕がいる。
「真希は待ってろ!」
「ちょ、待ってよ!せめて説明くらい…っ!」
私はそういって、階段を降りる前に将希の腕をつかんだ。
さすがに、このまま階段を降りるのは危険だと思ったのか、将希の足も止まる。
そして少しの沈黙のあと、将希はこちらに振り返った。
「……去年の今日、なんだよ」
「…なにが…?」
「……アユさんが、初めてヤられたの」
「えっ…?」
それって、確か圭介も拘束されながらその場にいて、その行為が終わるのをただただ待っていることしかできなかった、あの事件…?
「ほかに、考えられないんだよ。神谷さんが真希を振った理由。
今は不良やめて他からとくに恨まれてるわけでもない神谷さんだから、他の不良から真希が狙われてるわけでもない。
なのに真希が振られたってことは、真希と同じくらい大事にしてる、アユさんが関係してるしかないと思ったんだよ」
「……じゃあ、もしかして圭介…今、そいつらのところに…」
「……あぁ、だから真希は待ってろ」
「で、でも…そこにいって圭介はなにを…」
「……大事な女を奪われて、心まで奪われて、この世からいなくなるまで追い詰めた相手だぞ。
…考えられることなんて、悪いことしかねぇだろ」
その言葉に、私の顔も一気に力がはいる。そして、将希を掴むこの手にも…
「だから、真希は待ってろ。あぶねぇから」
「…ううん、いく。
お願い!私もつれてって!」
「は!?ダメに決まってんだろ!
そんなやつらのとこにいって、真希が神谷さんの女だってわかったら、真希だっておんなじことされるかもしれねぇんだぞ!?」
「でも圭介が放っておけないよ!!」
私がそうやって強く言うと、将希はため息をついた。
「……じゃあ、木村優斗って先輩、知ってる?」
「え、あ、うん
でもなんで優斗くん…?」
「あの人も、神谷さんの一番の友達だけあって喧嘩強いから。不良ではないけど、いつも神谷さんと一緒だったからなにかと頼りになる。
…あの人も呼ぶならついてこいよ」
「えっ、でも連絡先知らない…」
「俺が知ってる。」
えっ、どうして!?
不良ではないんだよね…?前に優斗くん、圭介の外の交遊関係まではわからないとか言ってたし…
また、わからない問題が浮上してしまったけど…
「急ぐぞ」
今は、そんなこと気にしてる場合じゃないよね。