君がいて、僕がいる。




静かに静かに…、音が鳴らないようにゆっくりとドアを開けると、中は予想よりも遥かに広い部屋だった。

ここからは中の様子が障害物によって見ることができなくて


「……奥、行く…?」

「うん」


私たちはゆっくりと静かに中に入ることにした。


嫌な緊張感が私を襲う。
胃腸がキリキリして、吐きそうな…そんな緊張感がたまらなく嫌で

「……戻る?」

思わず、優斗くんの手を握る力が強くなる。


「…ううん、大丈夫」


こそこそと小声で話ながらもゆっくり少しずつ足を進めると、奥の方が少し明るくて
優斗くんは進む足を止めて、障害物からゆっくりと奥の方を覗いた。


「……いる…?」


私のその問いに、優斗くんはこちらを振り返って静かに頷いた。


「神谷と、相手の男の二人だけだ」

「え、ふたり…?
仲間とかいないの?」


だって、アユさんが拉致られたときは共犯者とかいたんでしょ…?


「たぶん、主犯のやつだと思う」

「俺に確認させてください」


そういって、今度は将希が奥を覗く。


「……うん、確かにリーダーだけだな」

「ふたりだけ、か……」


なら、思ってたより怖くないかな…
将希も優斗くんもいるし…


「…ふたりは何をしてるの?話?」

「こっからはよく見えねぇ。
でもとりあえず、神谷さんが立っててその向こうに相手…熊谷ってやつなんだけど、そいつが座ってる。
拘束、されてんのか…?」

「え、どっちが?」

「熊谷の方に決まってんだろ」


そういって、将希もこちらへと体の向きを直した。


「どうする?とりあえず危ない感じは今んとこないけど…」


優斗くんの言葉に、私も将希も黙る。
危ない感じはない。…でも、このまま終わるとも考えられなくて


「……今のうちに、なんとかできないかな…」


圭介が悪いことを考えているなら、今のうちに止めたい。なにもなく終わらせたい。


「そうだな。もしかしたら仲間がここにくるかもしれねぇし」

「そうなったら一番危険なのは真希ちゃんだしね」


とにかく、迷ってる時間はない。
今のうちになんとかするしかないんだ。


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