君がいて、僕がいる。
「あ、のさ
私もちょっと覗いてもいい?
状況把握したい…」
とりあえず、私だけが現場を見ていないから…どんな感じなのか見たい。
どのくらいここから離れているのかとか、やばそうなのか、大丈夫そうなのか…
とにかく、どんな感じなのかを見たかった。
「いいよ。
でも、そーっとね?」
優斗くんと静かに場所を入れ替わり、私もそーっと奥を覗いた。
思ったより、ここからそこまで離れていない。ざっと…15メートルってとこ…かな。
薄暗いここと違って向こうは電気がついてて明るいから、こっちからはよく見える。
対照的に、たぶん向こうからはこちらが見えにくいはず。
確かに、相手の熊谷とかいうやつは座っている。
その前に圭介が立っていて、こちらからは背中しか見えない。
声とかはなにも聞こえない…距離的な問題なのか、なにもしゃべっていないのか…
でもとりあえず、熊谷の方の口は動いてない。
いったい、圭介はなにをするつもりなのか…
でも今日、去年と同じ場所にあいつといるってことは、やっぱり復讐…しか考えられなかった。
「圭介は、なにをするつもりなんだろ…」
小さく呟きながら、私は体勢を戻す。
ここにこうしていても仕方ないのに、私の足は動こうとはしない。
「どうするつもりなんだろうな…
神谷さんのことだから、半殺しにでもしてんのかと思ってたけどそうでもねぇし…」
「なんか、話してんのかな…」
わからなくて、私はもう一度向こうを覗く。
どうすればいいのかわからない。……でも、圭介が心配で…
このまま、なにも起こらないならそれでいい。
話し合って終わるならそれでいい。
……でもきっと、そんなことはないと思うから
私はまた、圭介のほうを見る。
「えっ…?」
さっき、見た光景とは違う。
「……どうした?真希」
ただただ熊谷の前に立っていた圭介。
なのに…
「ナ、ナイフっ…!」
今は、熊谷にナイフを向けてしゃがんでいた。
背中しか見えなかった圭介からはもう横顔までも見える。
あの、さっぱりとしている圭介とは思えない…怖い笑みを浮かべている