君がいて、僕がいる。



「あ、のさ
私もちょっと覗いてもいい?
状況把握したい…」


とりあえず、私だけが現場を見ていないから…どんな感じなのか見たい。
どのくらいここから離れているのかとか、やばそうなのか、大丈夫そうなのか…

とにかく、どんな感じなのかを見たかった。


「いいよ。
でも、そーっとね?」


優斗くんと静かに場所を入れ替わり、私もそーっと奥を覗いた。

思ったより、ここからそこまで離れていない。ざっと…15メートルってとこ…かな。

薄暗いここと違って向こうは電気がついてて明るいから、こっちからはよく見える。
対照的に、たぶん向こうからはこちらが見えにくいはず。

確かに、相手の熊谷とかいうやつは座っている。
その前に圭介が立っていて、こちらからは背中しか見えない。
声とかはなにも聞こえない…距離的な問題なのか、なにもしゃべっていないのか…
でもとりあえず、熊谷の方の口は動いてない。


いったい、圭介はなにをするつもりなのか…

でも今日、去年と同じ場所にあいつといるってことは、やっぱり復讐…しか考えられなかった。


「圭介は、なにをするつもりなんだろ…」


小さく呟きながら、私は体勢を戻す。


ここにこうしていても仕方ないのに、私の足は動こうとはしない。


「どうするつもりなんだろうな…
神谷さんのことだから、半殺しにでもしてんのかと思ってたけどそうでもねぇし…」

「なんか、話してんのかな…」


わからなくて、私はもう一度向こうを覗く。
どうすればいいのかわからない。……でも、圭介が心配で…

このまま、なにも起こらないならそれでいい。
話し合って終わるならそれでいい。

……でもきっと、そんなことはないと思うから
私はまた、圭介のほうを見る。


「えっ…?」


さっき、見た光景とは違う。


「……どうした?真希」


ただただ熊谷の前に立っていた圭介。

なのに…


「ナ、ナイフっ…!」


今は、熊谷にナイフを向けてしゃがんでいた。
背中しか見えなかった圭介からはもう横顔までも見える。

あの、さっぱりとしている圭介とは思えない…怖い笑みを浮かべている



< 186 / 248 >

この作品をシェア

pagetop