君がいて、僕がいる。
「真希」
「…え?」
「真希も、言いたいことねぇの?
こんな男が生きようが死のうが、俺には関係ねぇけど
…もう、二度と会わねぇかもしれねぇし、なにか言いたいことがあんなら言っとけよ」
そういわれて、私は泪を拭った。
そして、一歩一歩…将希と圭介に歩み寄った。
「……いっぱい悩んだりもしたけどさ、でも
私と出会ってくれてありがとう、圭介」
将希の横に立って、しっかり圭介の目を見てそう伝える。
私の気持ち、全部。
「あの日、言ってたよね。
こんな私でも死んだら悲しむ人がいる、って…
あのとき、私にはわからなかったけど…でも
気づかないだけで、私には私を大切にしてくれてる家族がいたみたい」
あの頃は、本当にひとりだと思ってた。
友達もいないし、家も荒れ放題で、って……
でも、私には私のことをこんなに見ていてくれる家族がいたみたい。
圭介の言うとおりだったよ。
「……ねぇ、圭介?
そんな男にもさ、死んだら悲しんでくれる人、絶対いるんだよ?」
そういったのは、圭介だもん。
どんな人でも悲しんでくれる人は絶対にいる。
いなくなって気づかない人なんて、いないんだよ…
「…圭介が死んだら、私も、将希も優斗くんも悲しむよ。
おじいちゃんもおばあちゃんも、北山さんや美咲さんだって、泣いて悲しむよ。」
そう話す私に、圭介の目線が重なることはない。
……だけど、将希が殴ったときに下りた手は下がったままだった。
この男に、ナイフは向かなかった。