君がいて、僕がいる。
「…どんだけ好きでもさ、どんだけ憎んだってさ
その人が死んで、圭介も死んだからって、アユさんに会えるわけでもないし、アユさんが甦ることもないんだよ」
ね…?
嘘でも、夢でもない。どれだけ痛め付けても、目覚めることはないんだよ。
これが現実…、わかってるんでしょう…?
「……前に、進むしかないんだよ
どんだけ好きでも、どんだけアユさんのことが懐かしくても、もう…二度と会えなくてもさ」
この世に生かされてる身として、前見て生きてくしかないんだよ。
「……真希」
「ん?」
ずっと、黙ったままだった圭介が、また私の名を呼ぶ。
私に、声が向けられる。
「俺は、最初から前見て生きてくつもりなんかなかったよ
ただ俺がこいつにむかついてて、こいつを殺したいって想いと、こいつ殺したらやることもないし、死ぬかって
ただそれだけなんだよ」
そういって、圭介が握るナイフが、また熊谷に向けられる。
私が投げた言葉は、なんにも圭介には当たらなくて…ただただ通りすぎていっただけだった。
「……じゃあさ、教えてほしいんだけど
私、アユさんのことなにも知らないから知りたいんだけど
…アユさんは、圭介に人殺ししてほしいと願うような、愚かな人間だったの?」
どうしたら圭介に届くのか、考えた結果がこれだった。
私の意見なんか、圭介に届くわけもない。……だったら、アユさんに頼るまでだよ。
「…私は、圭介のことすごく好きだよ。
好きだから…たとえ別れたって、この先圭介には幸せな人生送ってほしいって願うよ。
私じゃむりだったことを、他の誰かに…って、今はまだそこまで思うことはできないけど…でも、元気に生きていってほしいって願うよ。
でも、アユさんは違うの?
アユさんは、圭介に人殺しをして、自殺してほしいって、そんな愚かなことを願うような、そんな最低な人間だったの?」
私のその言葉に、圭介はなにを言わない。
ただただ、表情が固くなるだけだった。……でも
「……いや、アユさんは
誰よりも、神谷さんを大切にしてた。そんな人だったはずだよ」
将希が、そう答えた。
「神谷さんがケンカして顔に傷をつければめちゃくちゃ心配して、神谷さんが悪さをすれば親かよって突っ込みたくなるくらい怒るような、そんな女だった。
そんなアユさんが、そんなことを願うはずねぇだろ」
将希の言葉に、圭介の顔が歪む。
ねぇ、圭介が一番わかってるんでしょう?そんなことをして、一番悲しむのは…他でもない、アユさんなんだよ…