君がいて、僕がいる。
「…真希はさ、俺が憎くねぇの?
将希を悪い方へつれてったのは俺で、罪をかぶせたのも俺なのに」
「罪をかぶらせた、なんてさ…」
その言葉に、今度は私の顔が歪む。
将希から真実を聞いて…私こそ、圭介に恨まれて当然の人間だったんだから…
「…むしろ、感謝すらしてる。
将希のために、頭を下げてくれてありがとうって。
……それと同時に、私のせいで…」
”ごめんなさい”
そんな言葉でいいのかすら、わからない
もっともっと、謝罪をしなければならない立場のはずなのに、『ごめんなさい』がとても軽く感じてしまって…
「…神谷さん、俺本当の事知ってますから。
本当は、あれは神谷さんが俺を守るためにしたことだって。
…真希も知ってます。
だから、俺たちは神谷さんを憎んだりするわけないじゃないですか」
そういって、将希は私の頭に手を乗せた。
「…こんな俺とこんな真希を選んでくれたことに、俺たちは感謝すらしてますよ。
……だから、俺たちのためにもそんなこと…やめません?
俺らには神谷さんが必要ですよ」
まっすぐ過ぎる将希の言葉に、圭介が私たちを見た。
ずっと向けられてなかった視線がやっと私たちと絡み合った。
「……圭介は、幸せ?」
だからこそ、今私はこんなことを聞く。
どうか目を合わせて話したかった。
「え…?」
「幸せなわけないよね。
……そんな、苦しい顔してるんだもん。幸せなわけ、ないよね?」
私の言葉に、圭介の瞳が揺れる。
『幸せになるために生まれてきて、幸せになれとここまで生かされてきた』
そういったのは、他のだれでもない、圭介だもん
「……圭介、願い事っていうのは、自分で叶えるためにあるんでしょう?
神様でも、流れ星でもなくってさ」
『流れ星に3回願い事を言えたら、必ず願い事が叶うよ。
絶対。』
その言葉を、忘れた日はなかった。
その言葉の意味が、私にはわからなかった。
この世に、”絶対”なんてものがあるとは思っていなかったから。
「…流れ星が消える前に願い事を3回も唱えるなんて、心の中でも無理だよ。あんなに早いんだもん。
もしそれを成し遂げることができた人は、そのためにものすごい努力をした人。……努力することができる人。
だから、結局自分の願いは自分で叶えることができる人」
ね?そういうことだったんでしょう…?
「……流れ星に願いの言えることができる頃には、自分で自分の願いを叶えられている。
だから、そのくらい頑張れって、そういいたかったんでしょう…?」
今、こんな話をしてる場合でなないのかもしれない。
でも、どうか思い出してほしかった。
『守れる人になりたい』と願ったこと
そして”誰を守りたい”のかってこと
そのために、こんなところで終わらせていいのか、考えてほしかったんだ。
「だから、こんなところで諦めないでよ。
復讐したところで、誰も報われない。幸せになれるわけじゃない。
…圭介がいなくなっても、誰も報われないんだよ。
そんな無駄なこと、お願いだからしないで…
どれだけその人のことが憎くても、そんな愚かなことしないで…
圭介がどれだけ辛かったのかなんて計り知れないことだけど…でも、私は知ってるよ。
どんだけ将希が圭介を慕ってるか
優斗くんがどれだけ見守ってきたか
北山さんや美咲さんがどれだけ帰りを待ってるか
…おじいちゃんとおばあちゃんが、どれだけ圭介の幸せ願ってるか
全部全部、圭介と一緒に見てきたことだもん。
辛くて負けそうになることもあるだろうけど、そんなときは思い出してよ。
圭介には、圭介を想ってくれてる人がいるってこと。
それと、圭介を想ってこの世を去っていった人のこと」
ね…?圭介のまわりには、たくさんの人がいるんだよ
こんなに支えてくれる人がいるんだよ
…だから、どうか諦めないで___