君がいて、僕がいる。


「……ねぇ、圭介。
人は確かに未練ばかりでみんな死んでくんだと思う。
だからこそ、さ…残された身として、少しでも故人のことを想って生きなきゃ…じゃない?

アユさんが、後悔ばっかりで人生終わらせてしまったなら圭介がアユさんが喜ぶような生き方をしなきゃ。
アユさんが好きならさ、アユさんに嫌われないように生きなきゃ。

……じゃなきゃ、アユさんがかわいそうだよ…」

ねぇ、お願い圭介…

どうか、アユさんの好きな圭介のままでいてよ…
これ以上、アユさんを傷つけないでいてあげて。


「……それにさ、圭介の家族だって、圭介を見捨てたわけじゃないよ。
圭介には生きてほしかった。自分達の分まで生きてって…圭介まで連れていけないって
そう思っただけなんじゃないかな…?

圭介のことを想っていたからこそ、圭介を置いていったんだよ。
…見捨てられた、なんて悲しいこと言わないでよ」


歪んだ圭介の顔が、さらに歪む。
私の言葉が優しく包み込んでいるのか、それとも鋭く突いているのかはわからないけど…

どうか、届いて。お願い、響いて。


「どんだけ後ろめたいことがあったってさ
……みんな、そんな圭介のことが好きなんだからさ」


わかって。みんな、圭介のことが大事なんだよ。
こんなところで終わらせてたまるかって、私たちも、アユさんも、圭介の家族だって思ってるよ。


「……お願い、そのナイフ下ろしてよ」


ね、そんなもの持ってたって、なにも解決しない。
そんな物ではなんの解決にもならないんだよ


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