君がいて、僕がいる。



____翌日


私は、屋上にいた。
朝早いこの時間、もちろんここには誰もいない。

負けていられない。
おばあちゃんにも、おじいちゃんにも、圭介にも。

頑張るあの3人には負けていられない。


そう強く胸に刻んで、私は教室へと向かう。

強くなる。
死んだようにいきるのは、もう辞めたんだ。


堂々と、この廊下も歩く。
負けてられない、その一心で。


「あっ…、原さん、おはよう!」


え?

私?と思いながら振り返ると、そこには柴崎くんがいた。


「あ、おはよ」


笑顔で挨拶してくれた柴崎くんに、私も笑顔で返す。


「挨拶も、先輩は許してくれないかな?」


へへ、と苦笑いしながら下を向く柴崎くんに、私の顔も少し曇る。
……けど、嘘はつけないから


「…圭介とは、別れたんだ」


事実を告げる。


「えっ!?」


あれから全然日がたっていないのに別れた私たちに、この人はどんなことを思うんだろう。
でも…なんて思われたっていい。後悔はしてない。

あれだけアユさんを想う圭介を縛り付けておくことなんて、できなかったから


「そう、なんだ…ごめん、変なこと聞いて…」

「あ、ううん。全然大丈夫!気にしないで」


そういって私も明るく答えると、ようやく柴崎くんの目線は上がった。


「……それじゃあ、俺ってまたチャンスある?」

「…え?」

「俺、また原さんのこと誘っていいかな」


仄かに赤く染まる柴崎くんの頬。
あぁ、これってもうそういうこと、だよね…?

でもやっぱり私の心は驚くほど静かだよ


「…ごめん、柴崎くん
私、当分恋とかできないと思う。

……友達としてならいいけど、でも異性としてなら…
ごめんなさい」


私は、きっと圭介のことを忘れられない。
今後も圭介だけを想っていくのかはわからないけど、でもきっと忘れることはできない。

だから、気持ちの整理ができるまで、恋を言うものは封印する。
すぐに次に切り替えられないほど、私の中で圭介の存在が大きくなっていたから…


「……そっか、わかった」

「ごめんね」

「あ、いいよいいよ!気にしないで!
俺もダメ元だったし、もう諦めなきゃだなって思ってたから。
急に変なこといってごめんな」

「ううん、謝らないでよ」


そんなやりとりを、まだ朝の早い廊下でしていたら、私の背中に大きな衝撃が加わった。


「おっはよー!原さん!」

「なになに!?柴崎くん原さん狙いなの!?」

「……池谷さん…松下さん……」


夏休み登校日に話しかけてきたあの二人が、私の背中に抱きついてきたのだ。


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