君がいて、僕がいる。
それからすぐ予鈴がなり、本鈴がなるまでその二人は私に話しかけてきたけど、正直今までまったく話してこなかった私はどうすることもできず、最後まで薄っぺらい反応しかできなかった。
そして登校日の今日は午前中で終わり。
圭介が待ってろと言うのでとりあえず待つことにした。けどトイレくらい行っとくか、とトイレに向かえば、ちょうど男子トイレから柴崎くんが出てくるところで…
なんか、今まで散々避けてしまって、でも美優と付き合ってるって言うのが嘘だったならなんだか申し訳なくなってしまって
「……し、柴崎くん」
「…え?」
すっごく久しぶりに、この人に私から話しかけた。
そもそも隣のクラスで接点はなかったんだけど…それでも、挨拶とかもこれまで全部シカトして目も合わせずしてきたことが申し訳なかった。
あんなによくしてくれた人なのに、……あんなに好きだったのに。
「あ、あの…今まで避けててごめんね。
なんか私勘違いしてたみたいで…」
私がそういうと、柴崎くんは前と同じ笑顔を私に向けた。
「嫌われたのかと思ったよ。
俺、なんかしたのかなって」
「嫌いになったわけではないんだけど…」
……まぁ、ちょっとっていうかかなり裏切られた感はあったんだけどね…
美優に、柴崎くんと付き合ってるって言われたとき、彼女いるくせに誘ってきたのかよ、って…
「じゃあ俺、また前みたいに話しかけて平気?」
「え、あ…うん「だーめ」
もちろんいいよと伝えようとした瞬間、私の視界は塞がれた。
このくそ暑い中、私を包み込むこの体に、その声。
学校の廊下というこんなところでこんなことをする人は一人しかいない。
「ちょ、圭介っ…」
「真希は今俺の彼女だから、用もないのに話すのはだめ」
なっ、なにを言ってるんだこの人は…!!
「真希は今俺のことが好きだから、それでもいいなら用事あるときだけなら話してもいいけど」
「……じゃあ、ちょっとだけ原を貸してくれません?用があるので」
柴崎くんがそういうと圭介は一瞬強く抱き締めたけど、数秒で私を解放した。
さっきまで、どんだけ抵抗しても離さなかったのに
「…俺、真希のクラスで待ってるわ」
そういって、私の背中を押した。
「原、ちょっといい?」
「え、あ……うん」
圭介のことが気になって仕方なかったけど、圭介はもう私のクラスへと入っていったから
私は柴崎くんへとついていった。
……でも、やっぱりどうしても圭介のことが気になって
「どうしたの?」
「……ごめん、私やっぱり無理だ」
柴崎くんの話を聞かず、私はすぐにクラスへ引き返した。
数ヵ月前なら間違いなくドキドキ胸を高鳴らせたこの状況も、今では苦しいくらい締め付けられる。
圭介をおいて、この人についていくことは私にはもうできなかった。