君がいて、僕がいる。
「…真希ちゃん、圭介くんは元気?」
「え、うーん
……元気に見えるけど、でもまだだいぶアユさんのこと引きずってるかな」
「……そっか」
私がそういうと、ゆずちゃんは明らかに暗い表情を見せた。
「…前、圭介くんが真希ちゃんのこと追いかけていったの見たとき、圭介くんすごい真剣な顔してたし、圭介くんも前に進めたのかなって思ってたんだけどな」
「……ゆずちゃんは、お姉さんの彼氏が新しい彼女作ってて、嫌じゃない?」
「全然!だって、お姉ちゃんのせいでいつまでも圭介くんを縛り付けておくなんて、その方が私は嫌だよ。
……真希ちゃんは、お姉ちゃんのことどのくらい知ってる?」
「……なにがあったのかは知ってる、けど圭介から直接聞いた訳じゃないから、知らないことも多いかもしれない」
「そっか、噂とか…かな?」
「あ、うん…」
噂になってる、なんてやだよね…
そんなこと、みんなが知ってるなんて、私なら嫌だな…
「…あの、真希ちゃんが圭介くん、支えてあげてくれないかな」
「え?……私にできることなんて、すごく限られてると思うけど…」
「……ううん、真希ちゃんなら大丈夫。
だって、あんな真剣な圭介くん、ひさしぶりに見たもん」
真剣、ね…
「……でも、やっぱりアユさんには敵わないから…」
「そんなことないよ。
それはさ、お姉ちゃんが今ここにいないからそう思うだけで、普通に別れただけならきっと、圭介くんもあんなに引きずることなかったと思うし」
「……そう、かな」
だって、将希から聞くアユさんも、圭介から伝わってくる気持ちも
とても私なんかでは追い付けそうもないよ…
「今日ね。私がここに来たいって言ったんだ」
「え、うちに?」
「うん。ここに来れば、真希ちゃんに会えるかなって。
お姉さんに会いたいから将希の家にいきたいって」
「……なんでまた」
「…圭介くんが思ってるほど、お姉ちゃんはいい女じゃないから」
は…?え、どういう意味…
「お姉ちゃん、遺書とかはなかったんだけど、死ぬ前に私にメールしてきたの。
お姉ちゃんのケータイはお姉ちゃんが飛び降り自殺だったから一緒に壊れちゃったけど」
そういって、ゆずちゃんは私にケータイを渡してきた。
その画面には差出人が『佐脇歩美』となっていて、その文面は長く綴られていた。
「……読んでいいの?」
「うん。っていうか、真希ちゃんには知っておいてほしい」
そう、強い眼差しで私を見ていたから、私も一度深呼吸をして、メールの文面を見ることにした。