君のぬくもりを忘れたい
文化祭
「文化祭の出し物なににするー?」

その一声から、HRが始まった。

(文化祭!?秋とかじゃないの!?)

驚いたことのは私だけじゃない。それを見据えて、先生がだるそうに言った。

「まぁ、あれだ。新しいスタート!学校全体仲良くなろう!みたいな」

へぇ。

クラスの女子が、何にするか騒いでいる。

隣の河野くんは…

私が先教室に入ってからなぜか元気がない。

…どうしたんだろ?

いや、私が心配する必要はないはず。
私は河野くんの何だと思っているんだろう。クラスメイト、隣の席。ただそれだけだ。

私に心配されるのなんか、あっちにとっても迷惑だろう。

「河野くんは!?なにがいい?」

前に立っていた女子が話を河野くんに話をふる。

「…」


無視、、?
いや、そんなわけないよね。

私は静かに声をかける。
「こうのくん?呼ばれてるよ」

「え?あ、なに?」
やっと河野くんが反応した。

「おーい!日奈太、珍しいぞー!ちゃんと飯食わねーからだぞ!卵焼き不足か!?」
クラスのどこかから男子の声が聞こえる。

「ちげーよ!!!
…え!?文化祭!?秋に!?」

「わかってないじゃーん」

クラスが笑いに包まれる。

…よかった いつもの河野くんだ。

でも、どこか元気がない。

私が鈍感って言ったからじゃないよね…?

いや、本当のことだもん。
こんなにもモテてるのにわかってないとか。

しかも、鈍感って言われただけで傷つくようなタイプじゃないし!

私が視線を上にあげると

黒板にいつのまにか〝メイドカフェ〟と書かれていた。


「…!?」

メイドカフェ!?
え、ああいうフリフリのメイド服着て…?
–––––––––無理だよ、、、

「すげー顔だよ、壷林さん」
ニヤッと笑った河野くんが言う。

私は半開きだった口を閉じた。

前を向き直そうとした時、河野くんから衝撃な発言が。
「壷林さん、似合うと思うけど」
からかうように。

「〜〜〜〜〜〜〜!?」
顔が赤らんでいくのがわかった。
それを隠すために必死に声を出した。

「河野くんはいいよね、着なくていいし」

「あぁ!俺は厨房で紅茶でもつくっ…」

「なに言ってんのー!!!!」

河野くんの声が聞こえていたらしく、
数人の女子たちが河野くんの声にかぶせて突っ込む。

「もちろん、男子は執事だよ♡女子も呼ばなきゃいけないし、河野くんがいるなら多分学校の8割はくるよ」

河野くんが戸惑いながら
「え、俺似合わねーよ」と言う。

(河野くん、似合うと思うけど)

さっきの河野くんの言葉を置き換えて真似する。

本心

だけど…

冗談でも言えない。絶対に。


自分の意気地なさを痛感している中、
〝メイドカフェ〟の話はどんどん進んで言った。


< 16 / 24 >

この作品をシェア

pagetop