君のぬくもりを忘れたい

ラ…イバル?

俺の名前を呼ぶ男子が、
近づいてきた。

(???)

知り合いーだっけ?

顔がしっかり見えるぐらいの位置に
きて、ようやくわかった。

「…汐…るい?」

汐田 るい。
ちっさい頃から会ってないので
わからなかった。


少し焼けた肌に
短めの髪。

変わっていた。

てか俺、よくわかったな。
我ながら感心してしまう。

「一瞬忘れてもてたやろ!たいしてなかよぉなかったのに覚えとるとかたいしたもんや。久しぶり」

「おう、久しぶり!その様子だと元気だな」

「あぁ!大阪パワーもらってきたでぇ」

相変わらず元気だな。
the 健康って感じだ。

「ところで日奈太〜
さっきの美女誰や!?」


「…壷林さんの事?」


「壷林さんって言うんか!!!俺…」

ほらね、壷林さん。君はこんなにも注目されるぐらい綺麗で –––––––––


「一目惚れしてもうたわ」


モテるんだよ 。


「…」

「もしかして、付き合ってるとかないよな⁉︎
フリーやんな⁉︎」

「付き合ってないよ」

「よっしゃー 俺がんばろ」

関西弁が、静かな廊下に響く。

「教室はいれよ〜!!!あ、転校生はこっちだ!」

二組の担任が俺らに言う。

「ほーい!じゃあな、日奈太。

…お互い頑張ろーや」
誰にも聞こえない低いトーンで
るいは俺に言った。


呆然と立ち尽くす。


頑張る って何を?

壷林さんと

〝両思い〟だとか〝カレカノ〟だとかに
なれるようにってことか ー ?

そんなこと考えてなかった。

俺の一方的な片思いで満足してた。



––––––––––それでいいんだ。

満足しなきゃいけない。

恋人ができる価値がないんだ、俺は。

いや、俺がそれを望んでるから。


自分のことを好いてくれる、
自分の好きな人を傷つけるくらいなら ー


もどかしくてたまらない
他の人とは違う片思いで充分。


–たとえ届かなくても誰かを心から愛することができるって幸せなこと–

母さんが言ってたようなきがする。

納得だ。






でも –––––––––


できるくらいなら


俺だって


君に

「好き」って言ったり

君と

「両思い」になれたり …





してみたかったよ。





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