羊と虎
凱の指示通りコーヒーを入れて飲んでみる。
「おいしぃと思う・・・」
複雑な表情をした杏奈に苦笑する凱。
「いいよ。 あんまり変らなかったんでしょ」
「あはは・・・何か味覚音痴なのかな」
杏奈は表情が良く変るが、始めの頃はそこまででは無かった事を考えると、やはり杏奈も猫を被っていたのだと改めて思う。
折角美味しくなる方法を試したのに、あんまり変った気がしなかった事に凄く申し訳ない顔をしている。
「人の感覚なんだし気にしなくていいよ」
そう言ってインスタントのコーヒーを飲む姿は、威風堂々としていてそこだけ別の空間のように思えた。
『優雅にコーヒーを飲む姿は絵になるなぁ』
狭い自分の部屋には不似合いな凱をしげしげと眺めていたら、お腹が鳴った。
「あ、パン!折角出来たて買ったのに!」
急いで手近にあったクラブハウスサンドイッチにかぶりつくと、夢中で食べだした。
そんな杏奈を苦笑しながら凱も食べ始める。