羊と虎
「あ、いえ・・メッセージアプリですね。ちょっと貸して下さい」
距離は縮めず、手だけ伸ばして凱からスマホを預かり、確認してみる。
「あぁ無くなってますね。でも、アプリを再インストールして、電話番号とパスワードを入力したら大丈夫です」
手早くアプリのダウンロード画面を開くと、その動作を覗き込んで見てくる凱。
『本当にやり難いなぁ』
初めて設定に行った時の事を思い出し、苦笑してしまう。
あの時も食い入るように覗かれていた。
『癖なんだろうけど、緊張する』