超レ欲ス
少し話をまとめよう。
志田は昼休みに言っておいた通り、「妹」を俺に紹介した。
浅瀬晴美。
彼女は志田由高の義理の妹だそうだ。
血はつながってないし、複雑な家庭事情で今じゃ苗字も違うが、確かに三年前までは、いっしょに暮らす兄妹だったのだとか。
当の本人に確認したところそれを認め、そんなことをただのクラスメイトである俺なんぞにペラペラと話してしまったバカ兄を嘆いてのさっきのひと言であった。
やはりデジャヴ。
境遇は全然違うが、なぜか激しく志田に共感してしまう俺。
これはほんと、なぜでしょう?
まあ、それは置いておこう。
どうしてここに近江がいるのか。
じつは彼女、志田と浅瀬晴美の関係を知っていたらしい。
まあこれに関しては俺と違って、当事者の双方と交友があり、(さっき聞いた話だが、浅瀬晴美とも近江は仲が良かったそうだ)、かつ片われの恋人であるわけだから、相手の家庭事情を多少知っていたとしても何も不思議ではない。
その近江の話によると、志田と浅瀬晴美は、今日までずっと絶縁状態にあったらしい。
といっても、互いにいがみ合っているといったわけではなく、親が別れ離れてからきっかけに恵まれず、牽制しあうように他人のふりを決め込んでいた……のだという。
志田がそんなことを気にするなんてのは意外だったが、まあその辺はいろいろあるのだろう。
それで、近江はふたりを取り持つ役を買って出たらしい。
互いの連絡先すら知らなかったふたりをホレホレと突き合わせ、その最中の光景が、俺が見たあの、メアド交換現場だった、といったことであったらしかった。