溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
好きって気持ちの境界線
佐々木君と連絡先を交換したものの、初日だけお互い【よろしくね】だけのメッセージを交わしただけ。
その後は一度も連絡を取ることはなかった。

それというのも次の日から一週間、毎日病院へ向かい、おばあちゃんに会いにいくと佐々木君とも会えたから。

病室に顔を出してくれて、おばあちゃんの症状を説明してくれて、三人で他愛ない話をしてすぐに仕事に戻っていくけれど、手が空いている時は仕事の合間に自宅まで送ってくれる。

忙しい仕事なのに申し訳ないと思いつつも、毎回断るたびに『俺が佐野と一緒にいたいだけだから』と言われ、私との時間を作ってくれているのかと思うと嬉しかった。

お互いのことを知るような話はしていないけれど、何気ない会話の中で彼の性格が垣間見られたり、些細な言動で気づくこともある。

佐々木君は高校時代のイメージとは違い、実は話し上手でいつも話題を振ってくれる。よく笑う人で笑顔が似合う人。

車で家に送ってもらう際、少しのブレーキでも気遣って私の身体が前のめりにならないよう、手を差し伸べてくれる。歩道を歩く時はいつも彼は車道側。

さり気ない紳士ぶりに私はドキドキしている。
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