溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「佐野は十年前の約束を覚えている?」

放たれた言葉にドクンと心臓が跳ねた。

十年前の約束……それは『また気持ちを伝えていい?』って言ってくれたことだよね? そして私がずっと聞きたかったこと。

彼を見つめ返し、十年分の想いを伝えた。

「覚えているよ。……忘れられるわけないじゃない。あんなこと言っておいて、連絡先も聞かれずにいたんだから。……毎年桜が咲くたびに、思い出していた。どうして佐々木君はあんなことを言ったんだろうって」

だって十年後なんて、十八歳の私には遥か遠い未来の話だった。それはきっと佐々木君も同じはず。

それなのにどうして佐々木君は十年後……なんて言ったの?

彼の真意が知りたくて、ジッと見つめる。すると佐々木君は苦笑いしながら言った。

「それは勝てないと思ったからだよ」

「勝てないって……誰に?」

理由を聞かされても、意味が分からず小首を傾げる。

「佐野が好きだった人に」

ワンテンポ遅れて付け足すように言われた言葉に、耳を疑う。
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