溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「好きだった人って……え、それって……」

も、もしかして佐々木君に知られていた? 私が先生のことを好きだったってことを。

変な汗が流れそうになりながら様子を窺っていると、佐々木君の表情が物語り始めた。『ごめん、気づいていた』と言うように。

高校時代、先生への恋心は友達にも話せなかった。密かに想いを寄せていたつもりだったのに、佐々木君にはバレていたの?

そう思うと恥ずかしくて居たたまれなくなり、顔を伏せた。

「相手は大人で余裕があって、今の俺じゃどんなに頑張っても勝てないと思たんだ。……だから先生と同い年になった大人の俺を見て、佐野に好きになってほしかった」

「佐々木君……」

『ほしかった』は過去形――。そう、だよね。もう十年たつんだ。とっくに気持ちなんてなくなっているはず。だって私がそうだから。

なんて答えたらいいのかわからず、俯いたまま。すると信じられない言葉が降ってきた。

「だからこのタイミングで再会できたのは、佐野は俺にとって運命の相手だからだと思っている」

「……え?」

咄嗟に顔を上げると、彼は愛しそうに私を見つめていた。
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