溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
面会時間もそろそろ終わる頃。席を立ち、おばあちゃんや同室の人に挨拶をして病室を後にした。

夜の病院は病室以外、必要最低限の明かりしか灯っていなくてちょっぴり不気味。

通行口を抜けて病院の外に出ると、少しだけ肌寒い。

春の陽気になりつつあるといっても、夜はやっぱりまだ冷える。

歩を進めるものの、少し歩いたところで足を止めて、背後にある佐々木総合病院を見上げた。

六階建てで緊急病棟や、がんセンターまである。このあたりの医療の一角を担っている大きな病院として昔から有名だった。

そんな病院の跡取りとして、佐々木君は学校でちょっとした有名人だった。

それにカッコよくて勉強もできて、スポーツもできて。おまけに家は大病院とくれば、注目されないわけがないよね。

でも佐々木君はそれを鼻にかけることなく、むしろ大人しい人だった。

一年生の時、同じクラスで出席番号が同じで隣の席だった私たち。教室ではいつもひとりで、休み時間は本を読んだり、音楽を聴いて過ごしていて、みんな近寄りがたかった。
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