溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
素直な気持ちを吐露すると、佐々木君は大きく目を見開いた。けれどすぐに目を細めた。

「そうだよな、十年前も今も俺、一方的過ぎたよな。……ごめん、佐野の気持ちも考えずにひとり突っ走りすぎた」

今度は佐々木君は頭を下げて謝ってきたものだから、ギョッとし思いっきり手を左右に振った。

「そんなっ……! 佐々木君が謝ることないよ。悪いのは私だから。混乱して勝手にひとりで色々考えちゃって、佐々木君に聞かなかった私が悪いの」

「佐野……」

驚き顔を上げた彼と視線がかち合い、心臓がキュッとなる。

ずっとずっと聞きたかった。十年前からずっと。

「だから聞かせてもらってもいいかな? ……どうして佐々木君は、私のことを好きになってくれたの? ……十年間、一度も会っていなかったのに、どうして好きでいてくれたの?」

卒業式の日、告白されてから今日まで聞きたかったこと。教えてほしい、佐々木君の気持ちを。

ドキドキしながら彼の答えを待つ。すると佐々木君は私を見つめたままふわりと笑った。
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