溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「いいよ、そんなのいくらでも教えてあげる。……佐野が飽きるほどに」

あ、飽きるほどって……!

笑顔なのにどこか意地悪な顔をして言う彼に、私の心臓は暴れ出す。……でも、なぜだろうか。

佐々木君の意外な一面を垣間見て、嬉しく思う自分もいる。

「じゃあ飽きるほど聞かせてくれる? ……私、十年間ずっと聞きたかったから」

普段の私なら絶対に言わないようなことを口走るほどに。

「もちろん」

十年間、ずっと気になっていた。あの日の約束は今も有効なのか。彼は忘れずに想いを告げに来てくれるのだろうかと。

一年、二年と年を重ねるごとに私の中で気持ちは変化していったのかも。……きっと私は、毎年桜が咲く季節がくるたびに、想いを募らせていったんだ。

今、目の前にいる佐々木君に会いたいと――。
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