溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「そっか。……注目されるのは嫌だったけど、そのおかげで佐野にも見てもらえていたなら、悪いことばかりじゃなかったな」

「……っ」

今度は私が耐え切れなくなり、真正面を見る。

もう心臓に悪い。佐々木君ってば恥ずかしいことも、サラリと言うから。

キャップを開けてピーチティーを飲むと、佐々木君はゆっくりと話し出した。

「昔からずっと、俺は“佐々木真太郎”ではなくて、“佐々木総合病院の跡取り息子”としてばかり見られていたんだ。それが大きくなればなるほど苦痛になっていった」

私はペットボトルのキャップをしめ、彼の話に耳を傾けた。

「中学に上がると、上っ面な部分だけで女子に騒がれるようになって、そのせいで同性には妬まれて、友達がひとりもできない散々な中学生活だった。……だから高校では、目立たないように静かに過ごそう。そう思っていたけど、やっぱりすぐに俺が佐々木総合病院の息子だってバレた」

渇いた笑い声を漏らし、佐々木君は空を見上げた。
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