溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
えっと……これは私も座った方がいいんだよね? そもそも聞きたいとお願いしたのは私なわけだし。

それでも並んで座るのはなんとなく照れ臭い。少しだけ距離を取って腰を下ろした。

ちらっと隣を見ると、佐々木君は無糖の珈琲をゴクリと口に含んだ。

「あ、それも懐かしい」

「えっ?」

佐々木君が覚えてくれていたように、私も覚えている。

「高校生の時、佐々木君もいつも無糖の珈琲飲んでいたよね。それを見て私、同じ高校生なのに佐々木君が大人に見えたの」

当時を思い出して笑いながら言ったものの、佐々木君を見て目が丸くなる。

「え……佐々木君?」

みるみるうちに彼の顔は赤く染まっていった。

「……悪い」

そして口元を手で覆い、目を泳がせる。それは明らかに照れていて、なぜか私まで伝染し、身体中が熱くなる。

「ううん、こっちこそごめん。その……隣の席だったし、佐々木君はなにかと注目されていたから、つい目で追っていて……」

テンパって言い訳してしまうと、彼は「フッ」と笑った。
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