主任とルームシェア始めました

「………
そんな遥さんだから、俺の努力は
報われないんですね。」

ずっと明るかった坂野くんの顔に、少し影がさした。

「坂野くんの努力?」

「俺、遥さんが好きです。
ずっと好きでした。」

「え!?
あの… え!?」

「あれだけほのめかしても、遥さんには全く
通じてないから、きっと直球勝負しかないん
だろうなとは思ってましたけど。」

「………」

「返事はしなくていいです。
分かってますから。
ただ、これから一緒に仕事する上で、自分の
気持ちに決着つけてから、先に進みたかった
だけなので。
でも、河谷主任と万が一別れるような事が
あったら、俺に真っ先に教えてくださいね。」

と言って、坂野くんは最後に笑った。

「会社に戻ったら、もうただの後輩でいい
ですから、今、言ったことは忘れて
くださいね。

さぁ、そろそろ行きましょうか?」

そう言って、坂野くんが伝票を持って席を立った。

私が財布をバッグから出そうとゴソゴソしてる間に、レジで坂野くんがまとめて支払ってくれた。

ようやく財布を出すと、

「ここは俺に払わせてください。
俺が遥さんに男として向き合った唯一の
思い出の場ですから。」

と言って、寂しそうに笑った。

私は、
「ありがとう。
ごちそうさま。」
とお礼を言って、来た時と同じように2人並んで歩いた。

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