社内恋愛狂想曲
「どないした?橋口くんと喧嘩でもしたん?」

「そうじゃないんだけど……。あのさ、護って普段営業部にいる時はどんな感じ?」

私の質問の意図がわからない様子で、葉月はまた首をかしげている。

「どんなって?」

「同僚に私のこと話したりするのかなーとか……仲のいい女子はいるのかなーとか…… 」

歯切れの悪い調子で言葉を発すると、葉月はプチプチと枝豆を口に入れながら怪訝な顔をした。

「そんなん気にすんの志織らしくないな。ケンカじゃなかったら何があったんや?」

やっぱり葉月の目はごまかせそうもない。

ホントは話したくないけれど、話を聞くなら護が浮気してることは話さなきゃダメみたいだ。

私は仕方なく、今日目撃してしまった衝撃的な出来事を話す決心をして、景気付けに勢いよくチューハイを煽った。

ジョッキをテーブルの上に置いて、すっかり口紅の取れてしまった口元を紙ナフキンで拭う。

「じつはね……今日、護が浮気してる現場、見ちゃったんだ」

声のトーンを落としてそう言うと、葉月は一瞬大きく目を見開いた。

「えっ?!浮気って……嘘やろ?!」

「嘘じゃないよ、この目で見たんだから。仕事中に会議室でキスして、相手の体を撫でくりまわしてた」

「マジか……‼あの橋口くんが……‼」

< 10 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop