社内恋愛狂想曲
有無を言わさずズイッと差し出されたスマホを仕方なく受け取って電話を代わる。

三島課長はかなり動揺していたけれど、葉月がかなり酔っているのを心配していて、私ひとりでは送るのも大変だろうし、とりあえず車で迎えに行くから店の名前と場所を教えてくれと言った。

さすがは生き仏、どこまで部下思いで面倒見のいい上司なんだと感動すら覚える。

電話を切ってスマホを返そうとすると、葉月はまたジャケットのポケットを探っていた。

「んー、ないなぁ……。どこ行ったんやろ?」

「何探してるの?」

「スマホスマホ」

自分が強引に渡したくせに、それを忘れて探しているようだ。

お笑いネタによくある、眼鏡は額のところにあるのに、それを忘れて「メガネメガネ」と言いながら探すやつに似ている。

大阪人はみんな、酔うとナチュラルにギャグをやってしまうのかしら?

「葉月のスマホはここにあるってば」

「おー、そんなとこにおったんか」

葉月は私の手からスマホを受け取り、何やら操作し始めた。

しかし酔っているせいか、なかなかうまくいかないようだ。

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