社内恋愛狂想曲
「一応今月末付けで退職だけど、明日からは来ないよ。自分の体調とお腹の子の安全を第一に考えて療養するんだってさ。有給の残りを消化して、足りない分は欠勤するらしい」

有給を消化するとは言っても彼女は新入社員だし、周りを気遣うことなく好き放題休んでいたから、有給なんてほとんど残っていないはずだ。

しかし無理をして出社して何かあったら取り返しがつかないから、本人の意思を尊重するのが最善だと思う。

「まぁ、経済的にも社会的にもしっかりした婚約者がいるそうだし、結婚のきっかけとしてはいいんじゃないですか?最近は授かり婚とかいうんですよね?」

私がパソコンに暗証番号を入力して勤怠簿を開き、山村さんの有給が何日残っているのか調べていると、有田課長は首を横に振り、手招きをして耳を寄せるよう促した。

「それが婚約者の子ではなかったみたいだよ」

「……え?」

「これは俺が本人から聞いたんじゃなくて、新人ちゃんのお父様がぼやいてたのを部長経由で聞いたんだけどさ。親の手前もあって婚約者の彼とは清い関係だったのに、付き合ってもいない行きずりの男との間にできちゃったらしいんだ。その男とは酒の勢いで1回きりだったから、名前も連絡先も知らないらしい。そんなんで婚約破棄されたけど子どもには罪はないから、親の助けを借りて産んで育てるってさ」

「なんと……」

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