社内恋愛狂想曲
そういう状況のときに誰かが来たとして、普通わざわざドアを開けるかな?

しかも浮気相手と盛り上がってる最中に彼氏が来たなら、なおさら居留守を使うだろう。

彼氏と別れて乗り替えるつもりなら、もう別れるから来ないでとか、自分の口で言うんじゃないだろうか。

「私は葉月がそんなことするとは思えないんだよね。何かしら行き違いがあるみたいだから、ちゃんと確かめた方がいいよ」

瀧内くんは席の近くまで来ると、向かいの席に伊藤くんがいることに気付き、口角を上げてニヤリと笑う。

そして後ろを振り返り、連れてきたその人に、人さし指を唇にあてる仕草を見せた。

瀧内くんの後ろにいた葉月はその意味がわかると、絶句して口元を手で覆った。

今にも逃げ出しそうな葉月の腕を瀧内くんがガッチリとつかむ。

瀧内くんが連れてきた人が誰なのかわかったときは驚いたけれど、私はそれを伊藤くんに気付かれないように平然として話を続けた。

「俺はあのときどうすれば良かったんだろうって、今でも思うよ。葉月が不安がってるの知ってたから本当は離れたくなかったけど、仕事だから行かないわけにはいかないし、プロポーズしても無理だって断られて……。あのときゴネたりしないで、あっさり別れて解放してやった方が葉月にとっては幸せだったのかな」

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