社内恋愛狂想曲
もしかして……今のは芝居だった……?

「えっ、ちょっと待って!やっぱり今のナシ!」

「それは無理です。これ、僕と木村先輩の分の食事代です。話は済んだので僕は帰りますね」

瀧内くんはそう言ってテーブルの上にお金を置き、鞄を持って私を二人掛けの座席から押し出した。

そして私の顔を見てまたニヤリと笑う。

「やっぱりチョロいですね。でも佐野主任のそういうところがかわいいと思います」

「なっ……なんじゃそれ……!」

それ以上返す言葉もなく、去っていく瀧内くんの後ろ姿を、歯を食いしばりながら見送った。

「佐野、大丈夫か?」

「志織は泣き落としに弱いんやなぁ……」

「最近瀧内くんに関わると、いっつもあんな感じなんだ……。もう逆らえる気がしないよ……」

 伊藤くんは同情的な目で私を見て、黙ってメニューを差し出した。

「甘いものでも食って元気出せよ。おごるから」

「ありがとう伊藤くん……。お言葉に甘えて、激辛チキンとビール頼んでいい?」

「そこは甘いもんちゃうんかい!」

< 256 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop