社内恋愛狂想曲
三島課長は生卵を混ぜたカレーを口に入れてうなずく。

「大丈夫、これならいける」

「良かったです」

いつも作るカレーよりかなり辛かったけれど、三島課長と一緒に食べたカレーはとても美味しかった。

一緒に食べる人の気遣いひとつで、自分の作った料理の味まで変わるなんて初めて知った。

そういえば、ずいぶん前に子育てに専念したいという理由で退職した先輩がこんなことを言っていた。

“ただ付き合ってるだけなら感覚の多少のズレはさほど気にならないけど、結婚するなら物事に対する価値観と金銭感覚と、あとは絶対に食べ物の好みが合う人がいいよ。無駄な気苦労とか喧嘩をしなくて済むから”

どんなに小さく刻んであってもピーマンの入った料理はイヤだとか、こちらが忙しくても体調が悪くても、ちゃんとした手作りのごはんを食べさせてくれだとか、新婚のうちはかわいいものだと許せる小さなわがままも、子どもができると大きなストレスにしかならないらしい。

私には結婚とか親兄弟以外の誰かと暮らした経験はまだないけれど、これはおそらく、一緒に生活するならとても大事なことなんだろう。

いつか結婚するなら、息をするように自然にお互いを思い合って一緒に暮らせる人がいいなと思った。



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