社内恋愛狂想曲
「佐野さえ良ければ……一緒に行こうか?」

「私も三島課長のご都合が良ろしければ……」

今までも仕事帰りに二人で食事をしたり飲みに行ったりはしていたけれど、休みの日に約束をして二人で出掛けたことはないから、なんとなく照れくさい。

「なんだかいつもよりよそよそしいですね。それに呼び方がそのままだと、嘘だってすぐにバレます。お互いに名前で呼ぶことに慣れた方がいいですよ。今日から会社以外の場所では“潤さん”と“志織”に変えましょう」

瀧内くんは有無を言わさず、私と三島課長の明日の予定だけでなく、お互いの呼び方まで決めてしまう。

「ええっ……?!いきなり名前を呼び捨てにするのはちょっと……」

三島課長は何年もずっと私を名字で呼んでいたから、いきなり名前で呼ぶことには抵抗があるようで、しきりに恥ずかしがっている。

伊藤くんと葉月は上司の照れた様子がよほど面白いらしく、さっきから黙ってニヤニヤしている。

「婚約者だったらそれくらいは当たり前でしょ?どちらにせよ、バレーのときはみんなのこと名前とかニックネームで呼ぶじゃないですか」

確かに瀧内くんの言う通りなんだろうけど、実を言うと私も、三島課長の名前が“潤”だということをものすごく久しぶりに思い出したところだから、三島課長が恥ずかしがる気持ちはよくわかる。

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