社内恋愛狂想曲
最初こそ何もかもがぎこちなかったけれど、パスの回数を重ねるうちに、ボールがだんだん自然な放物線を描くようになってくるのがわかった。

「そういえばモナちゃんは?」

ウォーミングアップを終えて次の練習に移る準備をしながら、里美さんが他のメンバーに尋ねた。

「少し遅れるって連絡があったから、もうすぐ来ると思います」

練習前に自己紹介をしていたときになんとなくわかっていたけど、やっぱり例の婚約者候補のモナちゃんはまだ来ていなかったようだ。

あのやり取りを本人の前でもう一度くり返すのかと思うと気が重い。

もし目の前で泣かれたら良心が痛んでも嘘をつき通せるだろうかと思ったり、逆に絶対に負けないと噛みつかれたらどうしようと思ったりする。

なんにせよ、私は三島課長のためという名目で、まだ見ぬモナちゃんに婚約者だと言い張るしかないのだけど。

その後、男女混合で円陣を組んでのパス練習とレシーブの練習を終えて休憩に入ると、三島課長はスポーツドリンクを手に私のそばにやって来た。

「志織、大丈夫?無理してない?」

「大丈夫です。思ったより体が動いて、楽しいです」

「それならいいけど……つらくなったら無理せずに休憩していいからな」

「わかりました」

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