社内恋愛狂想曲
「志織はいっつもナチュラルメイクやし、そんなガッツリ化粧してへんやん」

「してへんっていうか……やり方を知らないからできないだけだよ。知ってたらするだろうけど」

周りの女の子達が化粧をし始めても、私は両親が厳しかったせいで、高校時代の3年間はノーメイクで通した。

やっと化粧をすることが許されたのは大学時代に就職活動が始まる頃で、就職活動に見合う身だしなみ程度の化粧しか覚えなかったので、この歳になってもメイクの技術は上がらず、ずっと横這い状態だ。

「ハタチとアラサーじゃ若さだけは敵わんけど、素顔やったら志織にも勝ち目はあるから、もっと自信持ってええよ」

「そうかなぁ……」

私達がそんな会話をしていると、葉月の横に立っていた伊藤くんが何かを思い出したらしく、「そういえば……」と言って語り始めた。

「モナちゃんはうちのサークルが体育館借りてる中学校のバレー部のOGなんだけど……大学に入学する前の春休みに、たまたま後輩の練習を見に行ったら俺らが練習してて、そこで潤くんに一目惚れしたらしい」

「そうなんだね」

高校を卒業したばかりのまだあどけない女の子が、大人の男性に近付きたい一心で一生懸命メイクを練習している姿が目に浮かぶ。

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