社内恋愛狂想曲
三島課長がボール拾いとサーブレシーブ練習を兼ねてコートに入るのを見届けると、瀧内くんは手元に飛んできたボールを片手で受け止めて、私の耳元に少し顔を近付けた。

「潤さんは女子にアドバイス求められても、いつも口で説明するだけで体に触ったりはしません。女子にあんな風に教えるのは初めて見ました」

それはつまり、婚約者である私は特別だと周りにアピールする作戦なのか?

それとも私とは手を繋いだりだっこしたりしてスキンシップを図ったから、触れることに少し抵抗が薄れただけ?

自分でそんなことを考えたくせに、昨夜の三島課長とのあわやのできごとをうっかり思い出してしまった。

三島課長の体温とか力強さとか、至近距離に迫る唇を脳からかき消そうと、慌てて何度も頭を横に振る。

そういえばさっきはサーブがうまく打てたことが嬉しくて周りの視線なんかは気にならなかったけど、よく見るとみんなが私と三島課長の方を見てニヤニヤしている気がする。

……ただ一人、モナちゃんを除いては。

モナちゃんは歯を食いしばり、下を向いてじっと手元のボールをにらみつけているように見えた。

三島課長が私に優しくしてくれるたびにモナちゃんが傷付いているのだと思うと、私の良心が痛む。

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