社内恋愛狂想曲
この歳になって初めて、恋愛においては順番なんか意味のないことなのだと気付く。

「モナちゃん……俺は歳だけで彼女を選んだわけじゃないし、もしモナちゃんが彼女と同じ歳だったとしても、俺はやっぱり彼女を選ぶよ」

三島課長が諭すようにそう言うと、モナちゃんはがっくりと肩を落とした。

大勢の目の前で、結婚したいほど好きな人に失恋してしまったことは気の毒だけど、中途半端に期待を持たせるようなことを言われるよりはいいのかも知れない。

そのあと、歩いて駅に向かうモナちゃんと里美さんとは店を出たところで別れた。

失恋したモナちゃんが気落ちしてこのままサークルをやめてしまったりはしないかと心配になって振り返ると、モナちゃんと同じ歳くらいの男の子がモナちゃんに駆け寄るのが見えた。

確か大学生の伸幸くんだっただろうか。

伸幸くんは里美さんと一緒に声をかけながら、モナちゃんの肩を叩いたり頭を撫でたりして慰めているようだ。

人を気遣うところとか面倒見の良さそうな雰囲気が、どことなく三島課長と似ているような気もする。

「伸幸はモナちゃんとは幼なじみで同級生なんだ。あいつは本当にいいやつなんだけど、めちゃくちゃ奥手で……。いつかは気持ちが伝わるといいんだけどな」

あぁ……なるほど、そういうことか。

モナちゃんが失恋の痛手から立ち直る日も、そう遠くはないのかも知れない。


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