社内恋愛狂想曲
いい歳して男の人と手を繋いでいるところを母親に見られるなんて、恥ずかしくてたまらない。

「……お母さんはそこで何してたの?」

『キッズエリアでヒーローショーがあったのよ。翼たちがばぁばと一緒に行きたいって言うから付き合ったんだけどね、翼がサッカーを始めることになったから、ヒーローショーの前にサッカーのスパイク買いに行ったの。そうしたら志織がお店から出てくるのをたまたま見かけて』

まさかそんな偶然があるとは!

……いや、待てよ。

いつもなら出かける先々で知り合いに会う私が、昨日は珍しく誰にも会わなかった。

確かに会わなかったけど、顔を合わせなくても見られてたんだから、会ったのと同じじゃないか!

翼というのは私の一番上の兄の二人目の子で、幼稚園の年長さんだ。

母は普段そんなおしゃれな場所には行かないのに、可愛い孫におねだりされて、嬉々として出掛けたのだろう。

孫を甘やかすのと同じくらいにとは言わないが、実の娘にも少しは優しくして欲しいものだ。

『それで、あの人とお付き合いしているってことでいいのね?』

母に尋ねられて私は返答につまってしまう。

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