社内恋愛狂想曲
「そのとき私はあなたと同じくらいの歳で、親から早く結婚しろって、毎日すごいプレッシャーかけられて焦っちゃってね……」

私だって母から絶賛急かされ中だ。

娘が三十路前になると、親が結婚を急かすというのはどこの家庭も同じらしい。

「私は三島くんより5つも歳上だし、まだ若い三島くんには結婚したいとは言えなくて、すごく悩んで……。そんなときに、結婚を前提に付き合って欲しいって歳上の上司に言われて、結局その人と結婚したんだけど、本当に好きだったのは三島くんだったから、やっぱりうまくいかなかった」

本当に好きだった三島課長を捨てて、すぐにでも結婚できる上司を選んだのは下坂課長補佐本人のはずなのに、結婚生活が破綻した理由を正当化しているようにも聞こえた。

なんにせよ、その結婚がうまくいかなかったのは三島課長のせいではないことだけは私にもわかる。

「本社に戻ることになってすぐに三島くんに会ってその話をして謝ったんだけどね……」

それは先週の金曜日に、私が駅前のイタリアンレストランから出てくる二人を見たときのことだろうか。

それとも三島課長の家で会ったときのこと?

もしかして下坂課長補佐を家で待たせておいて、私のところにお土産を届けにきたの?

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