社内恋愛狂想曲
「佐野もお疲れ様」

「お疲れ様です……」

下坂課長補佐は「お疲れ様です」と言いながら、私たちに向かってにこやかに会釈する。

三島課長だけならまだしも下坂課長補佐まで、どこにも逃げ場のないエレベーターで一緒になってしまうとは、私もとことん運が悪い。

有田課長がいる分だけ、いくらかはましだけれど。

「営業部は忙しそうだね」

「そうですね。異動になった人数が多かったので、引き継ぎだけでも大変です」

課長同士で会話している間も、下坂課長補佐の視線が気になって顔をあげられなかった。

「三島課長は美人な補佐がついていいなぁ……。うちは相変わらず俺と佐野主任二人で、なんとか部下を仕切って仕事を回してるよ」

有田課長が笑いながら何気なくそう言うと、下坂課長補佐は「美人だなんてとんでもない」と表向きは謙遜しながら余裕の笑みを浮かべている。

自分が美人だという自覚は大いにあるのだろう。

同性としては、そんなところが少々鼻につく。

葉月は飛び抜けた美人でも、それを鼻にかけたような態度は取らないのに。

「すみませんね、美人じゃなくて」

思わずボソッと呟くと、有田課長は慌てて取り繕おうとする。

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