社内恋愛狂想曲
三島課長は伊藤くんの方にイスごと体をずらしながら、メニューも下坂課長補佐の方も見ずに「ウーロン茶でいい」と答える。

「私もそろそろウーロン茶にしようかしら……。じゃあ私、化粧室に行くついでに注文してきますね」

下坂課長補佐は席を立とうとして、指先でするりと三島課長の耳の後ろに触った。

その手付きがやけになまなましかったので、みんなは何事かと驚いて一斉に下坂課長補佐を見た。

三島課長は下坂課長補佐に無防備な場所を突然触られたのがよほど堪えたのか、目を見開いて呼吸を止めている。

いやがって文句を言うような余裕もないらしい。

「糸くず、ついてましたよ」

いや、私が見る限り、糸くずなんてついていなかったはずだ。

下坂課長補佐は、とにかく三島課長に触りたくて仕方がないんだろう。

普通の男性が耳の後ろなんて場所を女性に触られたら、もしかして誘っているのかと思うに違いない。

きっと下坂課長補佐は色仕掛けで三島課長を落とすつもりなのだろうけど、それは逆効果だ。

三島課長は激しく拒絶反応を起こしているのだから。

「三島課長、大丈夫?顔色悪いよ」

下坂課長が席を外すと、有田課長は心配そうな顔をして尋ねた。

< 569 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop