社内恋愛狂想曲
「もともと彼女とは、すごく好きで付き合い始めたというわけではないんです。僕はよく覚えてないんですけど、飲み会で酔った弾みで一線を超えてしまったらしいんですよね。でも彼女は僕のことが好きだって言うし、なかったことにするわけにもいかず付き合い始めたという感じで」

瀧内くんは歳下の小娘が嫌いだし、おそらく瀧内くんが最も嫌いそうな話だから、これが嘘だということはすぐにわかる。

下坂課長補佐は瀧内くんが罠を仕掛けにきたということも知らずに、楽しそうに話を聞いている。

「それでね……最近見つけたんです、結婚にちょうどいい相手。歳上で役職就きで高給取りで。だけど婚約者がいるらしいんですよね」

瀧内くんの話を聞いているうちに、下坂課長補佐の表情が少し歪み始めた。

……そうか、これは三島課長と付き合っていたときの下坂課長補佐の話なんだな。

瀧内くんが言う“彼女”の性格は下坂課長補佐のことで、なれそめや彼女に対する気持ちは三島課長のもの、自分の立場を下坂課長補佐に当てはめているらしい。

これが事実なら、下坂課長補佐は酔った三島課長にありもしない肉体関係の責任を取らせる形で付き合い始めたんだ。

そして結婚しようと言い寄ってきた上司と結婚したのではなく、婚約者から上司を略奪したということか。

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